水戸偕楽園

関東王毛野氏（上野カミツケヌ、下野シモツケヌの語源）や渡来系豪族が盤踞した昔より、利根川河口は関東水運の要衝で、鹿島神宮（常陸国一宮）と香取神宮（下総国一宮）は海上交易・軍事拠点の名残り。また、蝦夷との争闘に揉まれた開拓領主達は家の子・郎党を率いて武士となり「板東兵をもって日本全国の兵に匹敵する」と謳われた「武士の本場」へ発展、同族争いを機に板東を制した平将門は岩井政庁で新皇を名乗り平安京からの独立を宣言した。平将門の乱を制した平貞盛は都へ戻って伊勢平氏の祖となり、前九年・後三年の役を経て源義家を祖と仰ぐ関東武士団を形成。常陸平氏大掾氏、執権北条氏の栄枯盛衰を経て、足利尊氏に率先帰服した佐竹氏が常陸守護に「関東八屋形」の格式を獲得し、佐竹義昭に至って常陸平定を果し戦国大名化、北条氏康を後ろ盾に小田氏・結城氏ら国人連合が巻返すが、嗣子佐竹義重が上杉謙信の援軍を得て内乱を制圧した。伊達政宗と後北条氏が提携し佐竹義重は挟撃の危機に陥るも、豊臣秀吉の小田原征伐に救われ太田城54万石安堵（属領を含めると80万石とも）。が、水戸城に居を移した嗣子佐竹義宣が関ヶ原の戦いで石田三成に内応し秋田久保田藩20万石へ左遷、江戸の防禦拠点である水戸藩は徳川御三家35万石に落着した。二代目の水戸黄門こと徳川光圀が興した水戸学は、幕末に至って尊攘志士の大義名分となり、徳川斉昭の幕政介入に始まる雄藩連合・公武合体運動が安政の大獄・桜田門外の変を経て倒幕運動へ変遷、実子の徳川慶喜が将軍となり幕府を終らせる顛末となった。かくも濃密な歴史を誇る茨城県だが、明治維新後は交通事情の変遷に伴って後進地域となり、所々に史跡はあるものの観光地形成には至らず。「日本三名園」の水戸偕楽園は日本一の梅園を擁し、市内に水戸城・弘道館跡もあるが、繁華街も食事処も誠に寂しく日帰り観光地の域を出ず。他には、ひたち海浜公園、大洗、土浦などがあるが、いずれも旅の動因には成り難い。なお鹿島神宮は、成田線・千葉県ツアーに組入れるのが常道だろう。