鶴丸城跡・城山

平安後期に平季基が興した「島津荘」は、関白藤原頼通の威光が土豪を靡かせ薩摩国・大隅国・日向国の過半を占める日本最大の荘園に発展、肝付氏（大伴氏の裔）が総代官となり新領主平家の下で繁栄を維持するも、平家滅亡に伴って近衛家へ領主権が移り新代官の島津氏が台頭（秦氏末流の惟宗忠久が島津を称す）。以後は一貫して島津氏が三州を支配するが、代を重ねるごとに分家が林立し同族争いが勃発、島津宗家と薩州家が共倒れで弱体化するなか、第三勢力の伊作家島津忠良（日新斎）が漁夫の利を占め勝利、嗣子島津貴久が宗家と守護職を奪取した。この間に日向国を伊東義祐に奪われ、大隅国では肝付氏らの反乱が起ったが、島津義弘が木崎原の戦いで形勢を覆し（九州の桶狭間）、伊東氏を追払って三州再統一を達成（肝付氏は島津家の重臣となり、幕末に小松帯刀を輩出）。伊東氏救済の名分を得た大友宗麟の大軍が来襲するも、島津家久が「釣り野伏」で再起不能の大打撃を与え（耳川の戦い）、さらに島原有馬氏の救援に赴いた家久は龍造寺隆信を討取る歴史的大勝利（沖田畷の戦い）。強敵立花道雪の病死を機に長兄島津義久は九州制覇に乗出し大友宗麟を臼杵城に追詰めるが、豊臣秀吉の九州征伐で万事休す。しかし島津氏は奇跡的に本領を安堵され、家督を継いだ島津義弘が朝鮮出兵で大活躍（泗川の戦い）、関ヶ原で西軍に付くも「島津の退き口」「捨て奸」で徳川軍に恐怖を植付け、薩摩藩56万石の安堵に（後に77万石）琉球支配権まで勝取った。そして幕末、名君島津斉彬が老中阿部正弘と結んで公武合体運動に乗出し、遺志を継いだ弟の島津久光が江戸へ乗込んで幕政クーデターを敢行（文久の改革）。徳川慶喜の専横で公武合体は費えるも、西郷隆盛・大久保利通が幕府連立から薩長同盟へ転じて辞官納地・戊辰戦争を断行。西郷は西南戦争で破滅し明治政府に甚大な被害を及ぼすが、大久保は新国家創業の大任を果し、加治屋町の後輩らが薩摩閥を為して長州閥と共に明治国家を牛耳った。鶴丸城跡・城山、鍛治屋町、磯別邸跡（尚古集成館）に史跡が整備され、島津斉彬・順聖公と西郷隆盛・南洲翁は神の領域、鹿児島と住民の全体が明治維新の誇りを今に受継いでいる。方や鹿児島県は大分県に次ぐ源泉数を誇り、定番の指宿温泉と霧島温泉郷は自然美と合さって良質な観光地を形成、津々浦々に温泉が湧き立ち、良い感じの穴場も多い（日当山、ラムネ、鰻…）。また、秘境ブームで屋久島が全国区の観光名所となり、種子島や奄美大島も観光開発に取組んでいる。